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岩本悠さん×豊田庄吾センター長対談

隠岐國学習センターでは5年後の学習センターのあり方、学びの姿を考える「学習センター3.0」プロジェクトを立ち上げました。

理想の学びを考えていくプロセスを開いて、学習センターに関わる皆さんと一緒にそれらを考えていきたい。そしてそれを映像の形にしてアウトプット(表現)したいと思っています。今回、学習センター3.0プロジェクトを考えていく材料として、魅力化プロジェクトの立ち上げに関わった島根県教育魅力化特命官の岩本悠さんと、隠岐國学習センターのセンター長豊田が対談を行いました。

 

豊田:
学習センターの未来を考えていく際に、学習センターの歴史を大切にしながら未来を創造していきたいなと思っている。あらためて学習センター立ち上げの時の意図や、ねらいなど、あのとき悠君が、何を考えていたのか聞きたい。

岩本:
まずあったのは、新しい学びの場を作っていくということ。ある種の実験場みたいな新しい学びが、学校現場のど真ん中では生まれにくいというか、学校という仕組みの中ではやりにくいということがあって、その脇で作っていくことを考えた。まったく違う新しいものだけでなく、学校と相乗効果を発揮するとか、ともに学びを補完しあうみたいな、そういう関係性の中での新しい学びをつくるということがひとつ中心にあった。

その時に考えていた新しい学びって何だったのかというと、ひとつは今でいう個別最適化。本当に一人ひとりに合った学びを実現していく。一斉授業とか、決まっている何十人かでやらなければいけないところの対極として、一人ひとりが目指したいものを、一人ひとりが得意な学習のスタイルの中で、自ら学んでいける場を作りたいということはあった。

豊田:
以前の資料を見ていると、そのころから学習の個別化とか個別最適化の話をしていたし、学びのあり方の転換みたいなことを言っていたなと思った。これだけ学力差が大きいから、先生が学びをつくるのではなく、生徒自身で学びを作っていく感じになるとよいという思想。一斉授業じゃなくてというのは言葉にして言っていたし、個別化だっていう話もしていた。裏側には学力観、学びのあり方の転換みたいな目的もあったんじゃないかなと思う。

岩本:
それでいくと最初に学習センターのスタッフってどういう人なの?と考えていた時に、「学びのコーディネーター」「学びのコンシェルジュ」という言葉があって、その人が教える人でなくていいよねと。教えるコンテンツや教材はゴロゴロあるが、生徒自身が自分に最適の学び方がすぐわかるかというとそうでない中で、対話しながらその中の選択肢みたいなものを提供したり、つないだりしながら学びをつくっていく存在。学びのプロセスをコーチしたり、モチベートしたりしながらPDCAを回していって、教えるというよりは学びをつないでいく、伴走していくスタンスだよねみたいなことは話していた。

豊田:
それが出てきた背景ってなんだったんだろうね?

岩本:
まぁ、やっぱりその、教師がティーチングしていくというよさに対して、集団の学習だけで補いきれない、こぼれ落ちていくものを学習センターが補完しながら相乗効果につなげていくイメージ。学校が公教育としてすべての生徒に学んでもらいたい、身につけてもらいたいものを基盤としてやるのであれば、学習センターはもっと(深く学びたい、先に)行きたいという子どもたちに伴走して引き上げられるか、学校のレベルに至らない子がいるときにどう一人ひとりと寄り添えるかという学校と学習センターの関係性をイメージしていた。

豊田:
ふきこぼれ的な子どもをちゃんとケアするところと、落ちこぼれもケアしていくという話はしていた。学校の図書館の中にコンシェルジュがいて、生徒が自分だけでは学びをつくれないのを、この教材あるよとか、自分で学びを作っていくということに対してアドバイスしていく思想。そこで何ができるっていう中から生まれたのが「夢ゼミ」の元となる授業で、最初は社会人になって本当に必要な力を身につけるみたいな発想で「学習意欲向上授業」っていう名前だった。それをもうちょっと体系化していこうという中で、未来を変えた島の学校の中にもあるように、PBL的にというか探求的にというかゼミ的にやっていくということをやりだした。

岩本:
そうですね。夢ゼミが立ち上がった時にあった議論のひとつは、知に偏ってないか、知識や情報みたいなものに偏重しているんじゃないかということ。ネットで調べてとか、この本読むとかっていうのは素晴らしいし、大事なことだと思うけれども、なんかそれだけだと都会と変わらないよねみたいな。なんで島前でやるの?じゃないけど、抽象論で世界の貧困がどうだとかいう前に、この地域の中に子どもの貧困だってあるよねみたいな、抽象と具象を両方行き来できるよさっていうのがこの島前というフィールドにあるよねと。なんかこの知的の知という部分と地域の地というか、リアルと情報みたいなものを両方もっと活かしたいようねという議論はあったなと思う。

豊田:
個人的には、社会で活躍するとか地域の担い手になるとかいうことを考えたときに、言葉は後づけだけど、もっとリアルにつながりながら学ぶとか、リアルな課題に対してリアルに関わるっていう、人とつながりながらとか、関わりながらとか、そういう学びが島前ならではというか、島前に合ってるじゃないかなというのは最初に話してたよね。
で、だんだんそれを、高2の秋から受験に向かうんじゃなく、1年生の時から段階的に学んでいくという感じで夢ゼミを3つに分けたりとかしていったんだけどね。

豊田:
そういう感じで立ち上げ始めたんだけど、立ち上がって初期を知っている人として、学習センターの価値はどう見えていた?

岩本:
夢ゼミのそれぞれに引き上げていくというか引きあがっていく感じは、今の学校ではできないなと思っていた。「なんで?どうして?」みたいな問いがそれぞれに自分ごととして来るというか、自分が探究したいことを探究して、それのフィードバックを受けたり、相互にフィードバックしあうみたいな、ある種『知的格闘技』みたいなものは価値があったし、凄いなと思ってましたよね。

豊田:
逆に初期のころ課題だなと思ったことは?

岩本:
学習の個別化みたいなところが、当時は少人数指導のような感じに見えた。学校よりは規模が小さいけれども、ティーチングの中で教わって受験に向かうみたいなもので、一人ひとりが学びを選んでつくっていくという個別には至っていない。最初描いた理想って口で言うほど簡単じゃないなと。その時の生徒も、そういう学び方よりティーチングでやった方が目の前の受験に関しては多分早いみたいな。慣れてない学び方を探究するほど受験が迫ってくると余裕がない。残り1年半でやるには最速で上げるやり方みたいな感じになって。その時の判断としてはそうだったとも思うけど。

豊田:
そうだよね。俺もあの時やったことはちゃんと肯定したいなと思っていて、こうやった方が絶対結果が出るじゃないみたいなところと、学校と一緒にやるっていうところの狭間で悩んだりしていた。
例えばだけど個別化も、高3の一人ひとりにカリキュラムはつくったりしていたけど、ベースの思想とかあり方がやっぱり結果を出す、そこを管理コントロールするのが大人側だっていうところがあったんじゃないかなと思う。それが多分年月を経て自立学習という名前になって、今はより高校生が、学習のPDCAサイクルを自分で回すっていくことをベースした形にはなってきている。
今は世の中的にもEdtechとかテクノロジーを使った学習の個別化みたいな話になっているけど、当時は大人の知見だとか、ノウハウ経験から学ぶという考え方だったから、そういう意味では世の中的にも(テクノロジーの進化によって)個別化ができやすくなっているのかなとは思う。

豊田:
話が飛ぶけど、未来のことを考えたときに、これからの学びってこういうキーワード、こういうエッセンスが大事なんじゃないかという話と、特に初期の頃から学習センターを知っている人として、これを期待するみたいなものって何かあるのかな。

岩本:
ひとつは、新しい学びの場をつくる学びのラボということ。やれるツールが10年前に比べて断然増えてきているので。(さらに具体的に言うと)学びの個別化だとか、自立学習という方向かなと。一方で、個別でテクノロジーを使ってやるんだったら、全国どこでもできるよねみたいな。それはそれで大事なんだけど、多様な人とともにみたいな、なんかそういう部分、地域の人となのか、中学生となのか、いや大学生となのか、別に外国人もいてもいいかもしれないしみたいな、リアルな場とか共にみたいなところもより進化があったら面白いかなみたいな気がしますね。

豊田:
悠くんが今まで大事にしてきて変えたくないものと、これから変えたいものではどんなものがある?

岩本:
学習センターに限らず、島前の魅力化で大切だなと思って、自分は引き継いできた、引き継ぎたいと思ったものって、やっぱりその「一人ひとり」っていうのと、「地域とともに」ということ。この二つは結構大切じゃないかと。理念として、それがなくなってしまうっていうのは寂しいとは思っています。で、なんだろうな、今後新しくっていうのは、現状の課題は見えてないからあれだけれども、なんか感覚的に言うと、どれだけその地域の方がここで学ぶとか、地域の方との相乗効果みたいなものが出ているか、地域に開かれているのかっていうことは思う。まあ開かれていると思うけど、もうちょっと地域における学習の拠点っていう部分を、2.0からやってきたと思うけど、3.0でも引き続き目指してもらいたいというのはあるかもなあ。

豊田:
バックキャスティング的に未来から考えるということと、大切な価値観や歴史を大事にして考えることって相容れないのかなとも思っていたけど、今聞いててそこを混ぜていきたいなと思った。次の「New(あたらしく生み出したいもの、新しいプログラム、システム)」って新しい要素、今あるものをベースに、例えばこの場所やこの時間で学ぶことを手放すとか、塾のスタッフが教えることを手放すとかが必要だと思ってたんだけど、今の話を聞いて、磨くとか進化させるということがもう一個キーワードなのかなと思ったな。

岩本:
なんかその、一人ひとりとか地域とともにみたいなものと、今言った教えることを手放すとか、この場で学ぶという場所の限定みたいな枠を取り払うことって、全然相反してないというか、一人ひとりの学びをというのをやろうとしたときに、今こだわっていたものを手放すみたいなことはあると思う。
なんかこう地域全体でみたいな風に考えれば、場所という制約を取っ払って学んでいくということだとか、いろんなものを手放していくイノベーションっていうのが、あるんだろうなあと思う。

豊田:
どうしても新しいものってなんなんだろうと、考えてしまう。次の新しい要素って、ひとつはテクノロジーであると期待してるんだけど、テクノロジーすら手法だから、(新しい)要素というかひとつの柱というか、それがなんなんだろうというのは自分自身にも見えてないんだよね。

岩本:
そうですね。なんなんだろうなと。まさに、これからやるビジョンづくりの中で生まれてくるんだろうなと思う。今ここで学んでる子たちの想いもそうだし、もしくはここで学ぶかもしれない中学生とかね、親や地域側の学びに対するニーズだとかがある中で何を手放して、何をつくるのか磨くのかというのが見えてくるんじゃないですかね。

豊田:そうだね。だからこそ、地域の人や、学習センターの新しい学びをつくることに関わりたいと思ってくださる方、いろんな人たちと一緒に、プロセス(作る過程)をひらいて、未来を考えていきたいなと思っている。今日はあらためて、ありがとう。

※5年後の学習センターを、地域の方や生徒ともに描き映像化するための資金を支援いただくためのクラウドファンディングを実施中です(2019年10月18日23:59まで)

こちらのページもご覧いただき、ご支援、シェア等応援よろしくお願いします!!
https://motion-gallery.net/projects/okilc_3_0

1 件のコメント

  • 久保田郁夫さんより:

    2019年10月25日 16:01

    新潟糸魚川市の久保田郁夫です。プロジェクトに心を引かれました。糸魚川市は周回遅れを痛感しているところです。地域との協働による高等学校改革推進事業に市内3高校がアソシエイト参加して、再構築しているところです。岩本さん、豊田さんの行動力を見習い糸魚川ならではの教育、人材育成に取り組みます。今後もよろしくお願いいたします🙇。

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